福利厚生制度の導入が会社の価値を高める理由。中小企業でも充実させられる?

福利厚生とは、企業(雇用主)が従業員(労働者)に対して与える給与以外の報酬です。各種手当や有給休暇、飲食店やレジャー施設の割引制度など様々な種類があります。福利厚生制度の充実は企業によって異なるため、「会社の価値」を見極める要素のひとつとして重視する従業員や求職者も多いでしょう。そこで本記事は、中小企業が導入すべき福利厚生制度とはどのようなものか、メリットデメリットも踏まえて詳しく解説します。

目次

企業の福利厚生制度の有無が求職者に与えるイメージは?

福利厚生制度とは、企業が従業員やその家族の健康や生活を向上させるために実施する施策・取り組みの総称です。

福利厚生制度の有無は、企業の雇用姿勢や余力を表すことになるため、企業イメージを左右します。また、採用活動においても大きなアピール材料として、優秀な人材確保に関わってくるでしょう。

福利厚生制度の有無によって求人の応募者数が大きく変わることも

採用大手の株式会社リクルートでは、求職者を対象とした意識調査を行っています。その中でも、福利厚生について興味深い結果となった2つのアンケートを紹介しましょう。

就職先を確定する際の決め手:「福利厚生の充実」は2番目にランクイン

ひとつ目のアンケートは、2022年12月1日時点で民間企業に就職が確定している大学生・大学院生に対して行った「就職プロセス調査」です。就職先を確定する際に最も決め手となった項目として、次のような結果となりました。

就職先を確定する際に最も決め手となった項目(複数回答)

第1位 自らの成長が期待できる 47.4%
第2位 福利厚生や手当が充実している 43.5%
第3位 会社や業界の安定性がある 39.5%

【就職プロセス調査(2023年卒)「2022年12月1日時点 内定状況」】https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/assets/20221215_hr_01.pdf
株式会社リクルート 就職みらい研究所調べ

働きたい組織の特徴:給与よりも福利厚生の充実

2023年度3月卒業予定の大学生・大学院生を対象とした「働きたい組織の特徴」というアンケート調査でも、福利厚生を重視する結果が出ています。

AとBのどちらの考えに近いか
A:個人の生活をサポートする制度(休暇制度や各種手当てなど)はないが、給与は高い 29.4%
B:個人の生活をサポートする制度を充実させる代わりに、給与は低い 70.6%

【大学生・大学院生の「働きたい組織の特徴」2023年卒】https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/assets/20230209_hr_01.pdf
株式会社リクルート 就職みらい研究所調べ

この2つのアンケート結果では、就職活動において「福利厚生制度の充実」が重視されているということがわかります。特に、2つ目のアンケートでは、「給与」と「福利厚生の充実」を天秤にかけた場合、後者を選ぶ学生が多いという結果になりました。それだけ福利厚生の充実が、雇用者にとって魅力的だというわけです。

企業が福利厚生を導入・整備する目的は?

そもそも、福利厚生とは「どのようなもの」が「何のために」あるのでしょうか。まずは、福利厚生の種類について見ていきましょう。

福利厚生にはどのようなものがあるのか

一口に福利厚生といっても様々な種類があり、法律によって義務づけられた「法廷福利厚生」と企業が独自に定める「法定外福利厚生」に大別できます。

法定福利厚生

企業が必ず導入しなければならない法定福利厚生は、次の6種類です。

法廷福利厚生の種類概要費用負担
健康保険業務外の病気やケガ等で治療が必要になった際に、従業員(被保険者)や家族(被扶養者)の医療費実費負担額を軽減するための公的医療制度です。企業(運営保険者)によって「組合健保」か「協会けんぽ」のどちらかに加入することになります。労使折半
介護保険介護が必要となった高齢者を支援するための公的介護保険で、40歳以上の従業員が加入対象となります。労使折半
厚生年金保険会社員が加入する公的年金制度です。20歳以上60歳未満の国民全員が加入する国民年金にプラスして加入する形となり、年金を受給する際も「国民年金+厚生年金」を受け取ることができます。労使折半
雇用保険従業員が離職した際に再就職を支援する制度です。離職時の状況に応じて、条件等を満たすものに失業給付の給付などを行います。企業2/3 従業員1/3
労災保険業務中に病気やケガを負った場合に、一定の費用を給付する制度です。企業全額負担
子ども・子育て拠出金児童手当や子育て支援事業などのために企業が納めます。企業全額負担

これらは、取得条件や日数・金額(割合)なども法律によって定められています。企業の判断で勝手に省いたり、増減させたりすることはできません。
「雇用保険・労災保険」を合わせて、「労働保険」と呼ぶこともあります。さらに「健康保険・介護保険・厚生年金保険」を加えたものの総称が「社会保険」です。

法定外福利厚生

企業が独自に定める法定外福利厚生は、食事補助や交通費支給、住宅手当などの従業員のニーズによって多岐にわたっています。最近では、フェムテック商品を購入できるサービスなども人気です。

法定外福利厚生の種類概要
慶弔・災害関連弔慰金、災害見舞金、結婚・出産祝い金、遺族年金、永年勤続表彰など
休暇関連病気休暇、リフレッシュ休暇、アニバーサリー休暇、慶弔休暇、夏季特別休暇、年末年始特別休暇など
住宅関連社宅、社員寮、住宅手当、住宅ローン補助など
勤務時間、待遇関連短時間勤務、テレワーク、フレックスタイム、ノー残業デー、時差出勤など
自己啓発・キャリアアップ支援資格取得の支援、自己啓発プログラムの提供、教育・研修制度の提供、社外の自己啓発サービス・教育制度に対する費用補助など
医療・健康関連健康診断・人間ドックの補助、ストレスチェック、メンタルヘルスチェック、運動施設等の利用補助
財産形成財形貯蓄、持ち株制度、ストックオプション制度、貸付制度など
その他・食堂、食事手当、食事券配布
・法廷を超える各種休暇・休業制度
・定年退職後の医療保障、保養施設利用補助、医療保障、OB会など
・社員旅行・歓送迎会・親睦会・社内運動会などレクリエーション活動の実施・補助
・保養施設、運動施設、宿泊施設などの利用補助
・エンターテインメントやレジャー施設などの招待・補助
など

そもそも福利厚生の目的とは

福利厚生の目的は、採用促進と離職防止が挙げられます。

新卒採用や中途採用において、応募者数を増やし、優秀な人材に選ばれる確率を上げることが目的のひとつです。また、すでに雇用している従業員の流出も防がなくてはなりません。

端的に言うと、福利厚生とは、働きたい環境・働きやすい環境だと思ってもらうために企業が用意する「従業員向けサービス」だというわけです。

導入しやすい福利厚生制度

福利厚生の導入を考えたとき、担当者の頭を悩ませるのは「どのような制度を取り入れればよいだろうか」ということではないでしょうか。企業規模や業種、従業員ニーズによって異なりますが、一般的に人気が高いとされるものを紹介します。

  • 健康診断、予防接種など
  • 社員食堂、社員向けカフェテリアなど
  • 保養所や宿泊施設、飲食店等の割引

福利厚生費の適正額は?

福利厚生には法定福利厚生と法定外福利厚生があることは、すでにお話しました。かかる費用もそれぞれに分けて考えましょう。

法定福利厚生「法定福利費」

社会保険料(健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料・労災保険料・雇用保険料)が、主な法定福利費です。負担額は、各種保険料率×企業負担率で求めることができます。ただし、各種保険料率は業種や自治体によって異なるうえ、毎年度見直しされるため、都度確認することが重要です。

法定外福利厚生「福利厚生費」

日本経済団体連合会の「福利厚生費調査結果報告 2019年度」によると、法定外福利費の平均額は「従業員1人1ヶ月あたり約2万4,000円」とのことでした。ただし、法定外福利厚生にかかる費用は、従業員がどのくらい利用するかによって異なります。

複利厚生を導入する際の注意点

複利厚生を導入する際は、以下の点に注意しましょう。

注意点1:目的の明確化

福利厚生制度を新たに導入する際は、「何のために導入するのか」を明確にすることが大切です。

様々な制度やサービスを見ていると、どれも良さそうに思えるかもしれません。しかし、やみくもに追加してしまうと内容が中途半端で、コストばかりかさんでしまうおそれもあります。当初の目的を見失わないように目的を常に念頭に置いておきましょう。

注意点2:従業員のニーズに合わせる

他社で人気の制度が、自社の従業員にも喜ばれるとは限りません。福利厚生は、従業員のライフスタイルや価値観によってニーズが異なるものです。必ず、自社の従業員が求める福利厚生が何なのか、傾向を調査するためにアンケートなどを実施しておきましょう。

注意点3:周知とメンテナンス

福利厚生制度を始めるときは、導入理由(目的)や利用方法などをしっかりと従業員に周知しておくことが重要です。よくわからないままだと利用率が上がらず、コストだけかかってしまいかねません。

導入後も、サービスの利用率・利用状況に応じたメンテナンスを行いましょう。利用率の低いものについて従業員に意見を聞き、改めて周知するなどの工夫が必要です。

企業が福利厚生を導入・整備することで得られるメリットとデメリット

では、実際に福利厚生を導入したり、整備したりすることで得られるメリットとデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

福利厚生を導入・整備することのメリット

福利厚生の導入や整備によって、次のようなメリットが得られます。

メリット1:採用時の応募者増加

就職や転職活動において、ほとんどの求職者が確認する情報のひとつが福利厚生項目です。企業を特徴づけるような魅力的な福利厚生制度があれば、採用活動におけるアドバンテージになるでしょう。

メリット2:従業員満足度の向上

福利厚生制度は、仕事と生活のバランスをとるのに役立ちます。充実したプライベートを過ごすことで、働く意欲が向上するでしょう。

福利厚生により労働環境が改善され、従業員にとって働きやすい環境になれば、生産性の向上や効率化にもつながります。自分の働きが企業に貢献しているという実感は、組織への愛着を生むため定着率も改善されるというわけです。

メリット3:企業のイメージアップ、信頼性向上

福利厚生は、顧客や利用者など社外に対しても、企業の雇用姿勢や方針を示す重大な要素です。福利厚生の充実は経営基盤が安定している証明になり、企業の信頼性向上にも貢献します。

メリット4:節税効果

福利厚生にかかる費用で条件を満たしたものは、「福利厚生費」として計上できます。福利厚生費は非課税対象のため、法人税を節税する効果も得られるのです。

福利厚生を導入・整備することのデメリット

一方で、福利厚生を導入・整備することによるデメリットとして、次のようなことが考えられます。

デメリット1:費用負担が大きい

福利厚生の導入、整備、運用には費用が必要です。また、少子高齢化が続く日本では、社会保険費用の増加が社会問題となっています。費用負担がネックになって、福利厚生の充実が難しいと考える企業もあるでしょう。

デメリット2:管理の手間がかかる

従業員のニーズに応えるためには、従業員の声を聞き、制度の見直しや改変を柔軟に行うことも必要でしょう。充実を図ればその分管理が煩雑になり、担当者の負担が増加します。

デメリット3:従業員ニーズに合わせることが難しい

せっかく福利厚生を導入しても、従業員の利用率が低ければ意味がありません。しかしながら、従業員全員のニーズに応えることは難しいのが現実です。利用する人としない(できない)人の偏りが出ると、後者が不満を抱くおそれがあります。

デメリットを軽減するためにできること

福利厚生導入におけるデメリットは大きく、無視できるものではありません。費用負担や業務負担がネックになっているのに無理に導入を進めても、従業員満足度を高めるものにならないでしょう。かえって不満を生むおそれもあります。

・費用負担が大きい
・管理の手間がかかる
・従業員ニーズに合わせることが難しい

3つのデメリットを軽減させる策として、福利厚生サービスを提供する代行企業にアウトソーシングするという方法が有効です。

福利厚生のアウトソーシングで注目したい「カフェテリアプラン」と「パッケージプラン」

代行企業が提供する福利厚生サービスを検討する際に注目したいのが「カフェテリアプラン」と「パッケージプラン」です。2つのプランでは、福利厚生サービスの選択方法や利用システムが異なります。自社の理念や予算、ニーズに合わせて、使いやすいプランを選びましょう。

利用したいサービスをピックアップするカフェテリアプラン

カフェテリアプランとは、従業員ひとりひとりが福利厚生サービスから好きなメニューを選択できるという制度です。予め企業が従業員に「ポイント」を付与し、従業員はポイントを使って福利厚生サービスを利用します。居住地や性別・年代、ライフスタイルに合わせて自由に選択できるため、多様なニーズに対応できるのが特徴です。

カフェテリアプランのメリット

カフェテリアプランのメリットは、「一律に与えられた範囲から選ぶサービス」ではなく、「自発的に、自由に選べるサービス」と感じるため、従業員の満足度があがりやすいという点です。均等に付与されたポイントを利用することで、不公平感も生じにくいでしょう。

また、従業員一人に対して一定のポイントを付与し、一定の期限を設けることで、コスト管理がしやすい点も大きなメリットです。「従業員数×年間ポイント数」が1年間の福利厚生費上限となり、予算をオーバーするリスクがありません。

カフェテリアプランのデメリット

カフェテリアプランでは、サービスの利用にポイントが必要です。そのため、ポイント不足で利用できないケースや、ポイントが余ってしまうケースなどがあります。特に未消化のポイントについては、換金や繰り越しができない単年度生産方式を採用する企業が多く、従業員の不満につながりやすい点に気をつけましょう。

低コストで多様なサービスを受けられるパッケージプラン

「パッケージプラン」は、福利厚生制度を代行企業にアウトソーシングする方法のひとつです。代行企業は、様々な種類の福利厚生サービスを組み込んで複数のパッケージを作ります。自社の予算やニーズに合ったパッケージを選択し、従業員あたりいくらの月会費を支払うというわけです。

パッケージプランのメリット

パッケージプランのメリットは、低コストで質の高いサービスを受けられるという点です。代行企業によって、飲食店や宿泊施設に対する割引などの特典がまとめられているため、自社が運営する手間や予算が抑えられます。また、人気店や人気スポットなど、実績のあるサービスを利用できるのも魅力です。

パッケージプランのデメリット

パッケージプランのデメリットは、予めパッケージとして組み込まれているため、自由なカスタマイズができないという点です。また、従業員ひとりひとりのニーズに対応することはできないため、不公平感が生じるおそれもあります。

低コストで加入できる福利厚生制度

福利厚生のアウトソーシングは代行企業や導入プランによって費用が異なります。低コストで導入できる福利厚生制度をいくつか紹介しましょう。

サービス名概要プラン・料金
ベネフィットステーショングルメやレジャー、ショッピングだけでなくeラーニングや介護、転居など、多彩なメニューが揃っています。【パッケージプラン】
入会金:2万円~ 月会費:従業員1名につき1,000円~
※最低金額は人数にかかわらず10名分
【カフェテリアプラン】
内容、付与ポイントによって異なる。
[例]年間予算従業員1人あたり約3万円~(付与ポイント3万pt・従業員規模1,000人の場合)
福利厚生倶楽部企業規模やライフスタイル、地域など、多様な従業員ニーズに対応したオリジナルカフェテリアプラン構築が可能です。【パッケージプラン】
入会金:3万円~ 月会費:従業員1名につき プラチナプラン 1,000円~/ゴールドプラン 750円~
※従業員規模100人の場合
【カフェテリアプラン】
内容、付与ポイントによって異なる。
WELBOX(ウェルボックス)旅行、レジャー、スキルアップ、オリジナルイベントなど幅広いサービスがあります。専用アプリでのポイント利用やオンライン手続きが便利です。内容、従業員数によって異なる。

従業員ひとりあたり500円! 低コストで満足度の高い福利厚生制度「かわさきハッピーライフ」

「かわさきハッピーライフ(川崎市勤労者福祉共済)」は、川崎市が実施する中小企業向けの福利厚生サービスです。個々の事業所では行いにくい福利厚生を充実させ、従業員とその家族が安心して働ける環境づくりを目指しています。

サービス名概要プラン・料金
かわさきハッピーライフ
身近で利用しやすいサービスが充実しており、会員(従業員)本人だけでなく配偶者や家族まで対象となるサービスも多く取り扱っています。【パッケージプラン】
入会金:無料 月会費:従業員1名につき500円

主なサービスは、下記の通りです。

サービス名概要
給付金結婚・出産・入学祝金、傷病・災害見舞金、弔慰金などの支給
健康支援定期健康診断、オプションがん検診や人間ドック等の費用補助、インフルエンザ予防接種の費用補助など
余暇支援東京ディズニーリゾートや温泉施設などの各種レジャー施設、スポーツや映画などエンターテインメント鑑賞、国内外ツアーなどの費用補助や割引料金制度
生活支援飲食店や美容院、ブライダル・貸衣装などに対する費用補助や割引料金制度
学ぶ・資格取得資格取得のための受講料支援や施設利用料割引など
貸付生活資金や福祉資金の貸付

会費は事業者負担で、税法上の損金または必要経費として処理することができるため、節税対策にもなります。(※自営業者は対象外となる場合もあるため、詳しくは税務署等で確認してください。)

まとめ:低コストでサービス内容が充実した「コストパフォーマンスのよい福利厚生制度」で従業員も経営者も満足度向上を

人材不足が深刻化する昨今、企業は規模の大小を問わず、人材確保に向けたあらゆる取り組みを検討する必要に迫られています。福利厚生の充実もそのひとつです。しかし、中小企業にとって、大企業並みの福利厚生制度を整えることは容易ではありません。福利厚生のアウトソーシングは、中小企業にとって強力な助っ人となるでしょう。

「かわさきハッピーライフ」は充実したサービス内容を低価格で利用でき、コストパフォーマンスに優れています。従業員および経営者満足度向上のために、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

>かわさきハッピーライフ(正式名称:川崎市勤労者福祉共済)は、川崎市が実施する市内中小企業向けの福利厚生サービスです。

かわさきハッピーライフ(正式名称:川崎市勤労者福祉共済)は、川崎市が実施する市内中小企業向けの福利厚生サービスです。

川崎市内の中小企業等にお勤めの方々を対象に、個々の事業所では行いにくい福利厚生を実施し、市内の中小企業等に従事する方々と事業主の福利厚生の充実を図っています。

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