会社の福利厚生を気にする学生が増加中。中小企業が福利厚生制度を充実させるには?

学生が就職にあたって企業を選ぶ際、気にするポイントは何でしょうか?学生が企業を選ぶの際に大切にするのは「やりがい」や「裁量を持って仕事ができるか」などですが、福利厚生の充実も重要です。そこで本記事は、中小企業が福利厚生を充実させるためのポイントについて解説します。

目次

学生が企業に求めるものは何か?

株式会社ウィビッド(本社:東京都渋谷区)が全国の2022年卒業予定の大学生・大学院生を対象に、「就職企業に求めること」をテーマとした調査を行ったところ、企業を見る際に重要だと考える事項として、最も高い回答割合は「社内の雰囲気がいいか」で31%でした。次いで「裁量を持って働くことができるか」「会社の理念やビジョンに共感できるか」が18%で並び、前向きな気持ちで働ける環境を重視していることが分かります。一方で、回答割合が低かったのは「希望する場所で働けるか」で0%、「福利厚生が充実しているか」で5%となっています。

学生の、企業の福利厚生制度への関心は高い

ただ、学生が就職活動する際の、企業の福利厚生についての回答では、「就職活動の際、企業の福利厚生を必ず確認する」が全体の46%となっており、「確認しないときもあるが、確認する」という回答も含めると、企業の福利厚生への関心は全体のの77%にも上ります。また「どのような福利厚生があるといいか」という質問に対しては、「住宅手当」が一番高く39%、「育児休暇・子育て支援」28%、「長期休暇」と続きます。

就職活動の際に企業の福利厚生を気にする学生は半数以上

同じく株式会社ウィビッドの調査で、「就職活動の際、企業の福利厚生を気にしていた」という学生は53%で、気にしていなかったという回答の47%を上回りました。また、「福利厚生を全く気にしていなかった」と回答した割合は全体の11%に留まっています。このことからも、学生も福利厚生に関心を高く持っていることがわかります。

なお、求める福利厚生の内容については、「住宅手当」がトップで59%、次いで、「育児休暇・子育て支援」の16%となっています。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000017.000047503.html
(株式会社ウィビッド「【大学生の本音調査 vol.4】「福利厚生を全く気にしていなかった」は、22卒ハイクラス学生の僅か11%」)

さらに2025年卒の学生向けアンケートでも、「企業選びで最も重視する項目」で福利厚生は5位となっています。

【2025年卒 実態調査】25卒は「転職」を視野に入れつつ「給料」を重視

福利厚生制度とは

福利厚生は法定内福利、法定外福利に分けられる

そもそも、「福利厚生」とは、従業員を雇用する企業が、従業員やその家族のQOL(=クオリティ・オブ・ライフ※人生の質)の向上を目的に実施する制度のことです。基本的には給与や賞与以外の報酬が福利厚生にあたり、その内容は多種多様です。また、福利厚生の種類は大きく「法廷内福利」と「法定外福利」に分かれます。

法定内福利とは

法定内福利とは、事業者の負担が義務付けられている福利厚生のことを指します。健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険、介護保険などが法定福利厚生にあたります。

法定福利の種類

  • 健康保険
  • 厚生年金保険
  • 雇用保険
  • 介護保険
  • 労災保険
  • こども・子育て拠出年金

法定外福利とは

法定外福利は義務化されていない福利厚生にあたり、いわば企業が独自に制度化している福利厚生のことです。住宅手当や特別休暇、研修費補助などがよく知られる法定外福利厚生ですが、実は普段の通勤交通費や仕事で使うPCユニフォームの貸与なども法定外福利に該当します。

その他の主な法定外福利厚生制度の例

  • 独身寮
  • 社宅
  • 社員食堂
  • 健康診断補助
  • 社員旅行
  • 懇親会費補助
  • 社内サークル活動費補助
  • 会社所有の保養所利用

法定外福利厚生の充実は企業の負担につながるなどデメリットも

福利厚生制度の導入に頭を悩ます経営者も多い

法定外福利は企業が社員満足度のために行うことが多く、また企業側の負担も軽くはありません。たとえば、住宅手当は社員数が多いほど福利厚生費がかかることになります。また、企業負担でさまざまな制度を取り入れたとしても、すべての社員が満足するかというと、必ずしもそれにつながらないという点も、企業にとって難しいところです。

なぜなら、家族手当や家族の誕生日などに使える特別休暇制度などは、一人暮らしの社員にとっては関係のない制度になるでしょう。また、独身寮や社宅なども入居条件などによって不公平感が生まれる可能性もあります。社員旅行・社内サークル活動などもあまり望まない社員や参加しない社員からすると、せっかく導入した制度も「一部の社員にしかメリットがない制度」ととらわれかねません。

そもそも中小企業が福利厚生制度を充実させることは困難

法定外福利は企業負担が大きくなりますが、中小企業にとっては制度が会社の経営を圧迫しかねません。大企業であればスケールメリットを生かし制度化することができても、中小企業にとってはこれから新たに福利厚生を作ることは簡単な決断ではないでしょう。大企業に比べ社員数が少ない分、社内の合意形成はしやすいかもしれませんが、より慎重になることが予想されます。

福利厚生制度の主流は自由に選択できる「カフェテリアプラン」

法定外福利は企業が独自に制度化できますが、社員の希望に沿ったものをそろえられるとは限りません。せっかく企業が制度を導入しても利用する社員が少なかったり満足度が低かったりしたら、導入している意味も薄れてしまいます。

そこで昨今、注目を集めているのが「カフェテリアプラン」です。カフェテリアプランとは、会社が設定したさまざまな福利厚生の中から、社員が自分の好きなものを選んで利用する仕組みです。カタログから好みの商品を選ぶような感覚で、必要な福利厚生を選べ、企業側も福利厚生制度を無駄なく使えることから人気となっています。

カフェテリアプランの内容は

カフェテリアプランでは、社員に一定のポイントが付与されます。社員は付与されたポイント内のサービスを選び、利用することになります。サービスはカフェテリアプランを提供している会社によって異なるものの「健康」「レジャー」「自己啓発」「育児」「介護」「財形」など多岐にわたります。そのため、社員は自分や家族に必要と思われるサービスを選ぶことができます。

給与以外の労働条件をどのように整えるかは企業にとって大きなポイント

社員の定着には仕事のやりがいや人間関係などはもちろん、働く環境面も大切!

学生の多くが就活の際に、企業の福利厚生について関心を持っていることは先の項でお伝えしましたが、福利厚生のある会社とない会社では、就職後の定着率は変わるのでしょうか。ここでは、福利厚生制度の充実度がどの程度社員定着率に影響しているのかを見ていきます。

離職理由で最も多いのは「勤め先の労働条件の悪さ」

厚生労働省が令和2年に調査した、「自己都合による離職理由」をみると、「労働条件(賃金以外)がよくなかったから」が28.2%でトップとなっており、「満足のいく仕事内容でなかったから」が 26.0%、「賃金が低かったから」が 23.8%で続きました。

このことからも、労働条件を整えることの重要さがわかります。「労働条件」とは就労に関する契約のことで、労働の期間や勤務先、始業・就業時刻、給与などを指します。しかし、それらを向上させることは簡単ではありません。ただし、「労働条件(賃金以外)」の部分を多少なりとも向上させること可能ではないでしょうか。その「労働条件(賃金以外)」の部分にあたるのが福利厚生になります。

福利厚生費はどれくらいかかるのか

福利厚生制度を整えるためにコストがかかることは避けられない!

では、企業は福利厚生にどの程度の費用をかけているのでしょうか。一般社団法人日本経済団体連合会2020年12月に発表した「福利厚生費調査結果報告」によると、「法定福利費」と「法定外福利費」を合計した「福利厚生費」の費用は10万8,517円(「従業員1人1ヵ月当たり」の平均値)でした。そのうち健康保険・介護保険、厚生年金保険、雇用保険などの法定福利費は8万4,392円、法定外福利費は2万4,125円となっています。法定外福利費には、住宅費や医療・健康・食事補助などの項目などが並びます。

https://www.keidanren.or.jp/policy/2020/129_honbun.pdf
(一般社団法人日本経済団体連合会「福利厚生費調査結果報告」)

法定福利は企業の義務とはいえ、法定外福利にも月2万円を超える費用がかかっています。従業員1人あたり年間30万円近くの費用が発生することになり、これも中小企業にとっては簡単に負担できるものではありません。

企業が福利厚生制度を充実させるメリットは十分ある

前述したように、労働条件を向上させることは社員の離職を防ぐためにも重要です。言い換えれば、社員の働くモチベーションを保つためのポイントの1つが福利厚生の充実度にあるともいえます。ほかにも、「就職活動の際、企業の福利厚生を気にする学生は半数以上いる」という調査結果からも、採用活動にあたって無視できない項目であることは明白です。

社員の定着率やモチベーションアップにつながり、採用時に有利になるといった点で、企業は福利厚生制度を少しでも充実させることのメリットは大きいといえるでしょう。

企業が福利厚生制度を充実させるメリット

福利厚生の充実は社員のQOLアップにつながる!
  • 社員のQOL向上を実現できる:住宅手当や食費補助、保養施設の利用などを充実させることは、社員のQOL(Quality of life=生活の質)向上につながります
  • 社員の満足度がアップする:福利厚生制度の充実は、社員の日々のモチベーションにつながります。また、満足度の高さは社員の定着率にも好影響を与えます
  • 採用時に優位性を発揮できる:福利厚生制度の有無は学生をはじめとする求職者がチェックするポイントです。福利厚生制度が充実していれば採用活動の際、自社が選ばれる可能性が高まります
  • 社員の健康促進が図れる:健康診断補助や、運動系サークルの活動費補助などがあれば社員の健康アップにつながるほか、社員の稼働率や生産性のアップも期待できます
  • 企業のイメージアップが図れる:福利厚生制度があることで、「社員を大切にしている会社」といったイメージを持ってもらいやすくなります。対外的なイメージアップにおいても福利厚生制度の充実は大切です。
  • 節税が図れる:福利厚生の内容によっては費用を経費計上できるため、節税効果もあります。

上記のように、福利厚生を充実させることで多くのメリットが見込めます。今いる社員に長く気持ちよく働いてもらうためにも福利厚生制度をできるだけ整えたいところです。また、自社の採用活動を有利に運ぶためにも福利厚生は無視できないといえるでしょう。

企業が福利厚生を充実させることで発生するデメリットはなにか

福利厚生を充実させることで企業にデメリットが発生する可能性も!

企業が福利厚生を充実させることは大切ですが、負担をかけずに制度化することはほぼ不可能です。むしろ、制度を充実させたり、社員の要望を可能な限り叶えようとしたりするほど、会社側の負担は費用面、管理面で増えるといえるでしょう。ここでは、福利厚生制度を整えるうえでのデメリットを紹介します。

企業が福利厚生制度を充実させるデメリット

  • 費用の負担がある:多くの福利厚生制度は、会社側が費用を持ち出すことになりますので、基本的に充実させるごとに負担が増します
  • 管理に手間がかかる:福利厚生の種類が増えたり、制度が複雑になったりすると管理が複雑になり、上長や総務部門などへの負担が増すことが考えられます
  • 必ずしも社員満足度に結びつかない場合も:家族手当や社内の趣味系サークルへの活動費補助などは、該当しない社員もいます。一部の社員だけが恩恵を受ける福利厚生制度が不公平感を生むことになります。

福利厚生制度を充実させることは社員満足度・定着率アップなどにつながる一方で、会社の費用負担、管理負担増が避けられません。また、社員の声をどう聞き取り、どのような制度を取り入れるかも重要です。一部の社員が得をしている制度などは社員の間で不公平感が生まれ、不満につながります。会社の負担が大きくならず、そのうえでどの社員でも有効活用できる制度を取り入れることが大切です。

中小企業でも福利厚生制度を充実させることは可能?

大企業は資本力などをもって福利厚生制度を充実させることができても、中小企業が大企業と同じように福利厚生制度を取り入れることは困難でしょう。しかし、大企業ほどでなくても、中小企業が比較的少額で一通りの福利厚生制度を整えることは可能です。福利厚生を充実させるための予算が取れない、と諦めるのではなく、少ない予算でも取り入れられる制度を紹介します。

少ない負担で充実させられる福利厚生制度とは

多額の福利厚生費をかけなくても社員満足度を高めることは可能です。たとえば、「毎月のMVP」などを表彰し、MVPに輝いた社員に一定額を渡すのも良いでしょう。社員の自己啓発のために書籍購入費の補助なども良いかもしれません。年間いくらまで、と決めておくことで多くの費用をかけなくてもすみます。

ただ、そうは言っても法定福利以外の福利厚生制度の導入は、予算が限られる中小企業にとって二の足を踏むかもしれません。しかし、たとえば、川崎市内の中小企業向け福利厚生制度「かわさきハッピーライフ」であれば、社員一人あたり月500円で福利厚生制度を充実させることが可能です。

かわさきハッピーライフ(川崎市勤労者福祉共済)とは

「かわさきハッピーライフ(川崎市勤労者福祉共済)」は、川崎市内中小企業向けの福利厚生制度です。運営は川崎市経済労働局労働雇用部であり、低コストで安定的な福利厚生制度を導入できます。

かわさきハッピーライフの特徴

かわさきハッピーライフはワンコインで加入できるのが魅力!

かわさきハッピーライフは、従業員1人あたり月500円加入できる福利厚生制度です。以下に紹介するような、さまざまなサービスがパッケージ化されているため、多くの社員のニーズを満たすことができます。

かわさきハッピーライフが行っている主なサービス

  • 給付事業:結婚・出産・傷病などの慶弔時に条件を満たすことで給付金を受け取ることができます。
  • 余暇支援:宿泊(旅行)補助、共済貸切バスツアー(日帰り)、東京ディズニーリゾート®・映画鑑賞券・日帰り温泉・レジャー施設・いちご狩り・潮干狩り・観劇チケット 等の割引
  • 生活支援:食事利用補助券、ホテルレストラン補助券、和菓子補助券、クリスマスケーキ補助券、ギフト券・ショッピング 等の割引
  • 健康支援:定期健康診断・オプション健診(胃がん・乳がん等)・人間ドック補助、インフルエンザ予防接種補助、スポーツクラブ割引
  • 学ぶ:資格取得:資格取得・趣味・教養講座の受講料補助
  • 貸付:会員は、物品の購入や子どもの入学など、資金が必要なときに貸し付けを受けることができます。

上記のようなサービスは会員本人(従業員)だけでなく、会員の親・子など家族も利用できるのもメリットです。(サービスにより異なります)

まとめ:企業の福利厚生を気にする学生や求職者は多い。低コストで加入できる中小企業向け福利厚生制度の導入を検討しよう

会社選びの際に企業の福利厚生制度を意識する学生は半数以上います。福利厚生がすべてではありませんが、中小企業にとって、福利厚生の有無は求職者のニーズを満たすという点で無視できないところであるのは事実です。しかし、中小企業が求職者または既存の従業員の多様なニーズを満たす福利厚生制度を自社で導入するのは困難です。中小経営者は低コストで導入できる「かわさきハッピーライフ」のような福利厚生制度を検討してみてはいかがでしょうか。